皮膚科

皮膚科のご案内

体をかゆがる、しきりに舐める… そのサイン、見逃さないでください

「最近、体をかく回数が増えた」 「同じ場所をしきりに舐めたり、噛んだりしている」 「フケが多い、毛が抜けてきた」このような症状はありませんか?
かゆみや赤みといった皮膚トラブルは、動物たちにとって大きなストレスとなり、生活の質を著しく低下させます。また、その症状の裏には、単純な皮膚炎だけでなく、アレルギーや内臓の病気が隠れている可能性もあります。
「いつものことだから」「この子のクセだから」と様子を見る前に、まずは一度ご相談ください。

皮膚病は「原因の特定」が鍵

皮膚病の原因は非常に多岐にわたります。

外部寄生虫

ノミ、ダニ(ヒゼンダニ、ニキビダニなど)

感染症

細菌(ブドウ球菌など)、真菌(カビ、酵母菌など)

アレルギー

食物アレルギー、アトピー性皮膚炎(環境中のアレルゲン)

内分泌疾患

甲状腺機能低下症、副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)などのホルモンバランスの乱れ

その他

心因性(ストレス)、自己免疫疾患、腫瘍 など

これらの原因が単独、あるいは複雑に絡み合って症状を引き起こしているため、「なぜ、かゆいのか」「なぜ、赤くなっているのか」を正確に突き止めること、が、治療の第一歩となります。

こんな症状は受診のサインです

ひとつでも当てはまる場合は、お早めにご相談ください。

  • 体(耳、顔、脇、内股、足先など)をしきりに掻く、舐める、噛む
  • 皮膚が赤い、ブツブツができている
  • フケが目立つ、毛がベタつく
  • 脱毛している、毛が薄くなってきた
  • 特定のフードやおやつを食べた後に症状が出る
  • 体臭が強くなった
  • しきりに頭を振る、耳をかゆがる
  • 定期的なノミ・ダニ予防をしていない

当院の皮膚科診療

当院では、的確な診断と、その子に合ったオーダーメイドの治療を大切にしています。

1. 丁寧な問診

皮膚科診療において、問診は非常に重要です。以下の内容を詳しくお伺いします。

  • いつから、どこに症状が出ているか
  • かゆみの強さ
  • 現在の食事内容(フード、おやつ、人間の食べ物など)
  • 生活環境(室内飼い、散歩コースなど)
  • シャンプーの頻度や種類
  • ノミ・ダニ予防の状況
  • 過去の治療歴

※可能であれば、症状が出ている部分の写真や、これまでに試したフード・薬の記録をお持ちいただくと診断の助けになります。

2. 視診・触診

全身の皮膚の状態、発疹や脱毛の分布、赤みの強さ、ベタつきなどを丁寧に確認します。

3. 必要な各種検査

問診と視診に基づき、原因を特定するために必要な検査を行います。

皮膚テープ検査

皮膚の表面や角質層にいる細菌、カビ(マラセチア)を顕微鏡で調べます。

毛検査(抜毛検査)

毛の状態や毛根を調べ、寄生虫や真菌(カビ)の感染を顕微鏡で調べます。

皮膚搔爬試験

皮膚の表面を削り、毛や角質内のニキビダニや、ヒゼンダニがいないかをを調べます。

ノミ取り櫛検査

目の細かいノミ取り櫛をしようし、ノミやノミの糞がないかを調べます。

アレルギー検査

血液検査で、特定の食物や環境アレルゲンに対する反応を調べます。犬ではⅠ型過敏症に関わるIgEの血中濃度の測定と、食物アレルゲンに反応して活性化するヘルパーT細胞を検出します。猫ではIgEの血中濃度のみを測定します。

皮膚生検

トレパンと呼ばれる器具が用いて皮膚の一部を採材し病理検査をします。免疫介在性疾患や腫瘍性疾患などの診断に使用します。鎮静もしくは麻酔下で行います。

細菌培養検査・薬剤感受性試験

細菌性皮膚炎で抗生剤の治療反応が悪い時や、咬傷などの感染が皮下組織まで達している時に実施する検査です。感染している菌種の特定と各抗菌薬の効果を調べることで、適切な抗菌薬を選択して使用することができます。

真菌培養検査・ウッド灯検査

真菌の検査に使用します。真菌が検出されると緑色に光ります。一部の真菌はウッド灯で発色しないため、専用の培地で10~14日培養し検査します。

血液検査・ホルモン検査

皮膚症状の原因として、内臓疾患やホルモンバランスの異常が疑われる場合に行います。

除去食試験・負荷試験(食物アレルギー診断)

アレルギーの原因となりうるタンパク質を一定期間除去した療法食を食べてもらい、症状の改善度を見ます。

当院の治療方針

診断結果に基づき、複数の治療法を組み合わせて、その子に最適なプランをご提案します。

スキンケア(シャンプー療法)

皮膚の状態に合わせた薬用シャンプーを使い、皮膚のバリア機能を整え、余分な皮脂や細菌・アレルゲンを洗い流します。適切な洗い方や頻度も指導します。

外用薬(塗り薬・スプレー・点耳薬)

症状が局所的な場合、抗炎症薬や抗生物質、抗真菌薬などの外用薬を使用し、ピンポイントで治療します。

内服薬

かゆみが強い場合は、かゆみを抑える薬(抗ヒスタミン薬、ステロイド、免疫抑制剤など)を適切に使用します。細菌、カビ菌、寄生虫などの感染がある場合は、適する抗生物質や抗真菌薬、駆虫薬を処方します。

食事療法

食物アレルギーが疑われる場合、原因となるアレルゲンを含まない療法食への変更を提案します。

獣医師からのメッセージ

皮膚病は、症状が良くなったり悪くなったりを繰り返しやすく、根気強い治療が必要になることが多い病気です。 「治らない」と諦めてしまう飼い主様もいらっしゃいますが、適切な診断と治療、そして何よりご家庭でのケア(投薬、シャンプー、食事管理)を続けることで、多くの場合、症状をコントロールし、快適な生活を取り戻すことが可能です。
「かゆみ」は、動物たちにとって大きな苦痛です。 「どうしてかゆいのか」を一緒に突き止め、その子にとって一番良い方法を見つけていきましょう。 ささいなことでも構いません。気になることがあれば、いつでもご相談ください。