血液内科

血液内科診療のご案内
〜血液と免疫の異常を正確に診断し、命を守る治療を提供〜

はじめに

血液内科イメージ

血液内科は、血液(赤血球、白血球、血小板)や骨髄、そして免疫系に関わる疾患を専門的に診療する分野です。代表的な疾患には、貧血(再生不良性貧血、溶血性貧血など)、白血病、血が止まりにくくなる凝固異常、そして自己の免疫が体を攻撃してしまう免疫介在性疾患(IMHA、ITPなど)があります。これらの疾患は進行が早く、急激に重篤な状態に陥る可能性があるため、迅速かつ専門的な血液の分析が不可欠です。初期症状は「元気がない」「疲れやすい」といった、見過ごされがちなサインから始まることも多いですが、病態の早期把握が救命率に直結します。

当院では、血球計算機と血液塗抹検査、骨髄検査を実施し、血液異常の根本的な原因を特定します。輸血療法や、化学療法など、それぞれのペットの状態に合わせた最適な治療法を提案し、大切な命を全力で支えます。

こんな「血液と免疫」のサインはありませんか?

  • 歯茎や舌が白い(貧血)
    元気がない、運動をすぐに嫌がる、呼吸が荒いといった症状を伴う。
  • 皮膚に点状・斑状の出血
    小さな紫色の斑点(紫斑)が見られる、鼻血、血尿、血便など出血傾向がある。
  • 高熱が続く・黄疸
    原因不明の発熱、目の白い部分や歯茎が黄色い(溶血性疾患の可能性)。
  • 感染症を繰り返す
    なかなか治らない皮膚炎や膀胱炎など、免疫力の低下が疑われる。
  • リンパ節の腫れ
    首や脇、股の付け根などのリンパ節が腫れて、しこりのように触れる。
  • 体重の急激な減少
    血液がんや慢性炎症など、重度の疾患が隠れている可能性。
貧血や出血傾向は緊急性が高い場合があります。上記のようなサインが見られたら、時間外でもまずはお電話でご相談ください。

当院の血液内科診療と検査

1. 精密な血液・免疫学的検査

一般的な血液検査だけでなく、専門的な分析で病気の根本原因を突き止めます。

血液塗抹検査

血液を顕微鏡で直接観察し、血球の形態異常や寄生虫、白血病細胞の有無を確認します。

骨髄検査

貧血や白血病の原因が骨髄にある場合に実施し、造血機能の状態を詳細に評価します。

凝固系検査

出血傾向がある場合に、血液の止血機能、血小板数、PT/APTT(外部検査)を調べます。

血液型検査、血液交差試験(クロスマッチ)

血液を提供する側(ドナー)と受け取る患者側(レシピエント)が適合するかを調べる検査です。

2. 専門的な治療と緊急対応

診断に基づき、命を救い、QOLを維持するための専門治療を迅速に実施します。

輸血療法

重度の貧血や出血に対し、緊急で輸血を実施し、命の危機を脱するサポートをします。
*供血ドナーを募集していますが、登録者数は限られているので、適する輸血を用意するのにお時間がかかります。

免疫抑制療法

免疫介在性溶血性貧血(IMHA)などに対し、ステロイドや免疫抑制剤を組み合わせた集中的な治療を行います。

化学療法(抗がん剤治療)

白血病や悪性リンパ腫など、血液の腫瘍性疾患に対する抗がん剤プロトコールを計画・実施します。

エリスロポエチン(EPO)製剤・鉄分の補給(鉄剤投与)の投与

腎臓の機能が低下すると、赤血球の生成を促すホルモンであるエリスロポエチンの分泌が減少し、貧血(腎性貧血)が起こります。これを補うために、人工的に作ったEPO製剤(注射薬)を投与します。

犬猫の主な血液の疾患

出血性貧血

外傷による大量出血、内臓からの慢性的な出血、血小板減少症などによる止血異常血液が体の外または内側に失われることで起こる。

免疫介在性溶血性貧血 (IMHA)

免疫の異常で自分の赤血球を破壊してしまう自己免疫疾患。犬で比較的多く見られる。

中毒による溶血 (ハインツ小体性貧血)

タマネギ、ネギ、ニンニクなどのネギ類や、アセトアミノフェンなどの薬物摂取による赤血球の破壊。

感染症による溶血

マダニが媒介するバベシア症(犬)、ヘモプラズマ症(猫伝染性貧血)など、寄生虫や細菌が赤血球を破壊する。

腎性貧血

慢性腎臓病に伴う腎性貧血腎機能の低下により、赤血球の産生を促すホルモン(エリスロポエチン)が不足する貧血。

白血病

白血球の元となる細胞ががん化し、骨髄内で異常に増殖する病気。血液のがんの一種。
リンパ腫・リンパ球が腫瘍化する病気で、リンパ節や様々な臓器に発生し、血液に影響を及ぼすこともある。猫では猫白血病ウイルス(FeLV)との関連が知られる。

免疫介在性血小板減少症

免疫の異常で自分の血小板を破壊してしまう自己免疫疾患。犬に多い。

飼い主様へ、そして大切なご家族へ

血液の病気は進行が早い一方で、適切な治療を迅速に行えば回復が期待できます。一方どれだけ治療をしても治療反応に乏しい病気もあります。ペットの体の中で起きている「見えない病気」と闘い、最善の治療ができるようサポートします。