腫瘍科

腫瘍科診療のご案内
〜大切なご家族であるペットの「がん」と向き合う飼い主様へ〜

はじめに

腫瘍科イメージ

近年、獣医療の進歩や生活環境の向上により、犬や猫も長寿になりました。それに伴い、人間と同じように「がん(腫瘍)」と診断される子が増えています。

「がんです」と告げられたとき、飼い主様は大きな不安と衝撃を受けられることと思います。しかし、がんは決して「不治の病」ではありません。早期に発見し、その子に合った適切な治療を行うことで、生活の質(QOL)を維持しながら、穏やかに過ごせる時間を延ばすことが可能です。

当院では、ペットと飼い主様の心に寄り添い、十分なご説明(インフォームド・コンセント)のもと、最善の治療法を一緒に考えていくことを大切にしています。

もしかして?と感じたらご相談ください

  • 体にしこりを見つけた
    口の中、皮膚、乳腺など、触って確かめてみてください。
  • 元気・食欲の低下
    なんとなく元気がない、ごはんを食べたがらない状態が続く。
  • 体重が減ってきた
    食事量は変わらないのに、痩せてきたように感じる。
  • 治りにくい傷や出血
    口や鼻からの出血、なかなか治らない皮膚のできもの。
  • 呼吸がおかしい
    咳が出る、呼吸が速い、苦しそうにしている。
  • その他
    リンパの腫れ、足を引きずる、お腹が張っているなど。

これらの症状がすべて腫瘍とは限りませんが、病気のサインかもしれません。気になることがあれば、お早めにご相談ください。

当院の腫瘍科診療

1. 正確な診断

腫瘍の治療は、まず「敵を知る」ことから始まります。どのような種類の腫瘍が、どのくらいの大きさで、どこまで広がっているのかを評価します。

身体検査・問診

全身の状態を詳しくチェックし、飼い主様からお話をお伺いします。

血液検査

全身状態の把握や、腫瘍による影響がないかを確認します。

レントゲン検査や超音波検査で、腫瘍の大きさ、位置、転移の有無などを評価します。

全身状態の把握や、腫瘍による影響がないかを確認します。

細胞診・病理組織検査

針で腫瘍を吸引もしくは、一部を切除することで細胞を採取し、良性か悪性か、どんな種類の腫瘍かを診断します。治療方針を決める上で最も重要な検査です。

2. その子に合わせた治療のご提案

近診断結果と、ペットの年齢、体力、性格、そして飼い主様のご希望を総合的に考慮し、最適な治療プランをご提案します。一つの方法だけでなく、複数の治療を組み合わせることもあります。

外科手術

腫瘍を取り除くための最も基本的な治療法です。
根治を目指せる場合があります。

化学療法(抗がん剤治療)

手術が難しい場合や、転移・再発のリスクが高い場合に行います。副作用を最小限に抑え、QOLを重視した治療を心がけています。

放射線治療

当院では設備がないため、専門施設と連携して治療を進めます。

緩和ケア

がんによる痛みや不快な症状を和らげ、穏やかに過ごせるようにサポートする治療です。根治が難しい場合でも、QOLの維持を最優先に考えます。

犬に発生する主な腫瘍

乳腺腫瘍

犬で最も多い腫瘍(避妊していない雌犬)。約50%が悪性(乳がん)で、早期の避妊手術で予防効果があります。

肥満細胞腫

犬の皮膚腫瘍の中で最も多い悪性腫瘍。悪性度はグレード(段階)によって異なり、高悪性度の場合は転移・再発しやすいです。

リンパ腫

血液のがんの一種で、リンパ球が腫瘍化する。多中心型(全身のリンパ節が腫れる)が最も多く、治療は化学療法(抗がん剤治療)がメイン。

皮膚腫瘍(良性)

脂肪腫、組織球腫、基底細胞腫など、良性の腫瘍も非常に多い。

血管肉腫

血管内皮細胞由来の悪性腫瘍。脾臓や心臓にできやすく、破裂による出血で急死のリスクがある。脾臓、心臓、皮膚など

猫に発生する主な腫瘍

リンパ腫

猫で最も多い悪性腫瘍。消化器型(腸)が最も多く、その他、縦隔型(胸の中)、腎臓、鼻腔など全身に発生。猫白血病ウイルス(FeLV)や猫免疫不全ウイルス(FIV)との関連性が知られる。

乳腺腫瘍

発生した腫瘍の80%以上が悪性と極めて悪性度が高い。早期に転移しやすいため、早期の広範囲切除と術後の化学療法が重要。

口腔内扁平上皮癌

口腔内腫瘍の中で最も多い悪性腫瘍。進行が早く、激しい痛みを伴い、食事困難になることが多い。

肥満細胞腫

皮膚型は比較的良性の挙動を示すことが多いが、脾臓や消化管にできると悪性度が高い。

扁平上皮癌(皮膚型)

特に白い毛色を持つ猫の耳の先端や鼻の頭など、色素の薄い部位に発生し、日光(紫外線)との関連が示唆される。

飼い主様へ、そして大切なご家族へ

腫瘍の中にも、良性の腫瘍、悪性の腫瘍、ゆっくり進行していく腫瘍、抗がん剤や外科手術が難しい腫瘍など、腫瘍によっても、その性格や治療法は全く異なります。外科手術や、抗がん剤や栄養チューブなどの緩和ケアでうまく付き合えば、寿命を延ばすことができます。
癌に対する飼い主様の考え方や治療法の選択はそれぞれ異なります。まずはどんな腫瘍かを知り、その子に合わせた治療法を一緒に見つけていけたらと考えています。どんな小さな疑問や心配事でも、遠慮なくお話しください。