眼科
眼科診療のご案内
〜「見る」喜びを守り、目のトラブルを解決します〜
はじめに
動物にとって「目」は外界を知るための大切な感覚器官であり、目の健康は生活の質(QOL)に大きく関わります。目の病気には、結膜炎や角膜炎のような一時的なものから、白内障、緑内障、網膜疾患、眼瞼腫瘤といった視力に関わる深刻なものまで多岐にわたります。目の病気の多くは早期に発見し、適切な治療を開始することで、進行を遅らせたり、視力を守ったりすることが可能です。
当院の眼科では、通常の身体検査では見逃されがちな目の小さな異常を見つけるために、専門的な検査機器を用いて正確な診断を行います。ペットの症状やライフスタイルに合わせた最適な治療法と、ご自宅での点眼・ケア方法を丁寧に指導いたします。
こんな目のサインはありませんか?
- 涙や目ヤニが多い
涙があふれている、目ヤニが黄色や緑色で粘り気がある。 - 目が赤い・瞼が腫れている
白目の部分(結膜)が充血している、瞼をこすっている。 - 目が白く濁っている
黒目の部分(角膜)や、瞳の奥(水晶体)が白く見え始めた。 - 頻繁に目をこする
前足で目を掻いたり、顔を床に擦り付けたりする仕草が多い。 - 物によくぶつかる
暗い場所や新しい場所で行動がぎこちない、階段を踏み外す。 - 眩しそうに目を細める
光を嫌がる、片目または両目をしょぼつかせている。
少しでも気になる変化があれば、お早めにご相談ください。早期の対応が目の健康を守ります。
当院の眼科診療と検査
1. 専門的な眼科検査
目の構造は非常に繊細です。正確な診断のために複数の専門検査を組み合わせて行います。
視診・対光反射検査
目の外観や、光に対する瞳孔の反応を確認し、視覚の有無を判断します。
スリットランプ検査
角膜、前房、水晶体、目の前部を立体的に拡大して観察します。また睫毛や眼瞼などの目の周りの観察にも使用します。
涙液量検査(シルマーテスト)
ドライアイ(乾性角結膜炎)の診断に必要な、涙の量を測定します。
角膜染色検査(フルオレセイン)
角膜の傷(潰瘍)の有無や深さを確認します。
超音波検査
眼球に超音波プローブを当て、眼球内の構造を調べます。眼窩の腫瘍や網膜剥離、水晶体の位置、眼球のサイズなどの評価が可能です。
培養検査
治りが悪い感染性の眼脂に対して、最適な抗生剤を選択するために、細菌の種類と薬剤耐性を調べます。
2. 治療計画とホームケア指導
病態に応じた内科的治療(点眼薬)を中心に、外科的治療が必要な場合も対応します。
内科療法
結膜炎、角膜炎、初期のドライアイなどに対し、点眼薬、内服薬を処方し、飼い主様に正しい点眼方法を指導します。
外科手術
白内障、緑内障、眼瞼内反症、チェリーアイなど、手術が必要な疾患に対応します。難易度の高い手術は専門医と連携します。
慢性疾患の管理
進行性の疾患に対しては、定期的な検査を行い、QOL維持のための継続的な薬物管理と生活環境のアドバイスを行います。
犬猫の主な眼科疾患
白内障
目の中のレンズ(水晶体)が白く濁り、視力が低下する病気。進行すると失明に至ります。加齢、遺伝(特に犬)、糖尿病(犬に多い)などが主な原因です。
緑内障
眼球内の圧力(眼圧)が異常に高くなり、視神経や網膜を障害する病気。進行が早く、急性の場合、発症後短時間で失明に至ることがある緊急性の高い疾患です。症状は、目の痛み(しょぼしょぼする)、目の充血、角膜の濁り、瞳孔が開いたままになるなど。
角膜炎
目の表面の透明な膜(角膜)に炎症が起こる病気。
角膜潰瘍
角膜に傷がつき、表面の上皮が欠損した状態(びらん)から、より深くまで損傷が及んだ状態(潰瘍)。外傷(引っ掻き、異物)、乾燥、感染などが原因です。痛みで目をしょぼつかせたり、涙や目ヤニが多くなったりします。
結膜炎
まぶたの裏側と眼球をつなぐ粘膜(結膜)に炎症が起こる病気。目ヤニ、涙の増加、白目の充血が見られます。細菌感染や免疫が関与しています。
核硬化症
白内障と間違われやすいですが、加齢により水晶体の一部が硬化して白く見えるもので、白内障と異なり、視力に大きな影響はほとんどありません。
犬の主な眼科疾患
乾性角結膜炎(KCS、ドライアイ)
涙の量が不足したり、質が低下したりすることで、角膜と結膜が乾燥し、慢性の炎症や損傷が起こる病気。目が充血し、ネバネバした目ヤニが多くなります。
瞬膜突出
一般に「チェリーアイ」と呼ばれる病気。第三のまぶたである瞬膜(鼻側の目頭にある膜)に隠れている涙腺が外に飛び出し、赤く腫れて見える状態。
進行性網膜萎縮(PRA)
網膜の光を感じる細胞(視細胞)が徐々に変性・萎縮していく遺伝性の病気。夜盲(夜に見えにくい)から始まり、最終的に失明に至ります。
眼瞼内反症
まぶたの縁が眼球側に巻き込まれ、まつ毛や被毛が常に角膜を刺激してしまう状態。角膜炎や角膜潰瘍の原因となります。(シーズー、パグなど短頭種に多い)
猫の主な眼科疾患
猫ヘルペスウイルス性眼疾患
猫風邪の原因ウイルスの一つで、一度感染すると再発することがあります。発熱、くしゃみ、鼻水などの全身症状とともに、結膜の充血、涙・目ヤニの増加が見られます。
ぶどう膜炎
眼球内部の虹彩、毛様体、脈絡膜からなる「ぶどう膜」に炎症が起こる病気。猫では全身性の感染症(FIV、FeLV、FIPなど)から続発することが多いです。重症化すると緑内障を併発することもあります。
高血圧性眼症
特に高齢の猫で、腎臓病や甲状腺機能亢進症などから高血圧になると、網膜剥離を起こし、急に失明することがあります。
飼い主様へ、そして大切なご家族へ
目の病気は進行が早く、特に痛みがある場合はペットにとって大きな負担です。小さなサインを見逃さず、早めに受診することで、愛するペットの「見る」喜びを長く守ることができます。
目の病気やホームケアに関する疑問にも、わかりやすく丁寧にお答えいたします。

