生殖器科

はじめに

生殖器科では、避妊・去勢手術などの予防的な処置から、発情・出産に関する問題、子宮蓄膿症や乳腺腫瘍といった疾患の治療を行います。
生殖器の疾患は、ホルモンバランスの崩れによって起こることが多く、進行すると命に関わる緊急性の高い状態(特に子宮蓄膿症)になることがあります。また、犬種や猫種特有の繁殖の悩み、望まない妊娠を避けるための相談も大切な診療分野です。

当院では、ペットの将来の健康を考えた避妊・去勢手術の適切な時期のご提案をはじめ、ホルモン検査や画像診断を駆使し、早期発見と適切な治療を行うことで、ペットと飼い主様が安心して暮らせるようサポートいたします。

生殖器・ホルモンで気になるサイン

  • 陰部からの異常な分泌物
    黄色や茶色、血の混じった膿のような分泌物が続いている。
  • 避妊・去勢手術の相談
    手術の適齢期や、メリット・デメリットについて知りたい。
  • 発情周期の異常
    発情が来ない、発情が長く続く、異常な出血がある。
  • お腹の異常な膨らみ
    妊娠の可能性や、子宮に水や膿が溜まっている可能性がある。
  • オスの前立腺の悩み
    排尿困難、血尿、便が出にくいなどの症状がある。
  • 乳腺・睾丸の腫れ
    体にしこりや腫れがあり、特に性ホルモンに関連する部位。
    特に雌の陰部からの膿の排出、未去勢の雄の排尿困難は、緊急性の高い病気のサインかもしれません。

当院の生殖器科診療と検査

当院での検査

問診に加え、画像検査やホルモン検査で、生殖器系の構造的・機能的な問題を特定します。

超音波検査

子宮や卵巣、前立腺、睾丸の状態を詳細に確認し、腫れや膿、腫瘍の有無を診断します。

血液検査

子宮蓄膿症などの感染性の病態で、多臓器不全(他の臓器に影響が出ていないか)を調べます。

レントゲン検査

腫瘍性疾患による肺転移を検査や、妊娠診断時の頭数確認に使用します。

細胞診・組織検査

異常な分泌物や腫瘤から細胞を採取し、炎症か、細菌感染か、腫瘍性病変かを調べます。

ホルモン検査

各種性ホルモン(プロジェステロン、エストラジオールなど)の濃度を測定し、発情周期や不妊の原因を探ります。外部検査になります。

治療と予防的な処置

疾患の治療はもちろん、将来的な健康を見据えた予防的処置も重要視しています。

避妊・去勢手術

将来の子宮蓄膿症、乳腺腫瘍、前立腺疾患などの予防のため、安全を最優先した手術を行います。

外科手術

子宮蓄膿症や、尿道閉塞を伴う前立腺疾患など、命に関わる緊急性の高い疾患に対して迅速に対応します。

内科療法

ホルモンバランスを整える投薬、抗生剤治療(感染症の場合)など、病態に応じた治療を行います。

犬猫の生殖器疾患

子宮蓄膿症

子宮内に細菌感染が起こり、膿が溜まる病気。発情終了後2ヶ月頃に多く、発熱、多飲多尿、元気・食欲の低下、嘔吐、腹部膨満が見られます。緊急の卵巣子宮摘出術(避妊手術)が治療の第一選択です。

乳腺腫瘍

乳腺にできるしこり。犬は良性と悪性が半々ですが、猫は悪性の乳腺癌の割合が非常に高いです(80〜90%)。避妊手術の時期が早いほど発生リスクが低下します。転移がなければ、外科的な完全切除で完治します

前立腺肥大症

高齢の未去勢犬に最も多く、男性ホルモンの影響で前立腺が肥大する。排便困難、血尿、排尿異常がみられます。去勢手術によって治療します。

精巣腫瘍

精巣にできる腫瘍。潜在精巣の場合、正常な位置にある精巣と比べて腫瘍化するリスクが非常に高いです。

潜在精巣

精巣が生後4ヶ月以降も陰嚢内に下降せず、腹腔内や鼠径部に留まっている状態。精巣腫瘍や精巣捻転のリスクが高まるので、外科的摘出が強く推奨されます。

会陰ヘルニア

高齢の未去勢犬に多い。肛門周囲の筋肉が弱くなり、直腸や膀胱などの臓器が皮下に飛び出す病態。排便、排尿がしづらくなり、肛門周囲のヘルニア部が膨らむのが特徴。男性ホルモンが筋肉の脆弱化に関与するとされることから、外科的な整復手術と去勢手術を同時に行うことで再発率を低下させることができる。

飼い主様へ、そして大切なご家族へ

生殖器の疾患は、ペットのQOLに大きく関わります。子宮蓄膿症や乳腺腫瘍などは、発見が遅れると重篤な状態に陥ります。日頃から、お腹や陰部の様子、発情周期を注意深く観察し、少しでも異変を感じたらご相談ください。